1998年 『大きい花』へ寄せられたコメント
『大きい花』をきいて どんと
どんとは順ちゃんのブルースギターの大ファンで、ボガンボスにも一度順ちゃんをゲストにお招きして『ジャングルビート・ゴーズ・オン』というライブ盤を作りましたが、それはどんとの一番のお気に入りのアルバムなのです。その理由はやはり順ちゃんが金色のドレスを着てバッチリメイクして素晴らしいプレイを決めてくれたからだと思っています。(ボ・ディドリーのバックの女性ギタリストのダッチェスにそっくりだった。)それから5年の月日が流れ順ちゃんが初のソロアルバムを作ったというのでワクワクして聴かせてもらったのです。開けてビックリ玉手箱。順ちゃんがピアノを弾きながら美しい声で優しく歌っていたのです。こんな内面が順ちゃんの心の中に広がっていたとは…。全部聴き終えたどんとの胸に静かに感動の渦が広がった。順ちゃんが一人で歩き出したのだ。すべてを唄にぶつける新しいPOPな順ちゃんをどんとは心から祝福します。順ちゃんは大きい花。
沖縄より また逢う日まで どんとより
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男らしい女の人が好きです。あの、それってガサツとか、汗臭いっていう意味じゃないです。こうピッとしてる、とかシャキッとしてるとか、自分の事はきっちり自分で出来ちゃうっていう意味です。だから、可愛くても清楚でもセクシーでも「男らしい」は成立します。ブルース・ギターを弾きまくっている時のじゅんちゃんは本当に「男らしく」て素敵です。ブルース界のリボンの騎士です。
女らしい女の人が好きです。優しくて、感情が細やかで、夢があって。このCDから聴こえてくるじゅんちゃんはとっても素顔に近くって、「女らしい」いや「女の子らしく」て素敵です。このCDを聴いた人には彼女のブルースを、ブルースを聴いていた人にはこのCDを、ぜひ聴いてもらいたいものです。
梅津 和時
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勿論、人にはいろいろな面がある。例えば私だって人前で歌う事もあるが会社でハンダ付けをする事もある。そんな簡単な事ではないが、これは一般的には「女流ブルース・ギタリスト」として知られる長見順のもう一つの面、シンガー・ソング・ライターとしての長見順の初ソロ・アルバムなのである。ライヴハウスのセッションで見せる不思議なフィンガー・ピッキングやトンチの効いたソロなどの代わりに、「時間」、「友達」、「眠り」といった言葉がピアノや弦の叙情的なメロディーに乗って淡々と流れる。意味が伝わる、というよりは風景を呼ぶ歌である。夏の曇った海辺が見える事もあれば、子供の頃に見た井戸が見える事もあるがそれは聞く人によって違うのだろう。グワワワとギターを弾いているしか音楽的な能がない私からするとこんな才能を持つ順ちゃんがうらやましいが、仲人としては実生活でも歌の様にいつも寝てばっかりいるのか、と心配でもある。
吾妻光良
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最近、耳にする音楽は『流行』の一言ではすまされない程片寄った傾向が多い。そんな中で、このアルバムには忘れかけていた、手作りな暖かさや懐かしさを感じさせる曲、それにオリジナリティーあふれる詩が集まっていると思う。
サウンド自体も、シンプルでコンピューターを使わずに生音を大事に構成されているので、とても聴きやすく、俺は好きだ。今「SIMBA SALOON」というバンドで彼女と一緒にユニットを組んでいる。このバンドの中での彼女は、小気味よいカッティング・ギターを聴かせてくれるが、改めて彼女の声とアコースティックギターがとてもマッチしている事を再認識した。
このようなアルバムがひとつのジャンルとして日本の音楽シーンに定着してほしいものだ。
斉藤ノブ
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あるとき長見順さんの弾き語りを聴いた。ギターソロ、カッティングとも、そのリズム感の良さに驚いた記憶がある。そして彼女のギターが好きになった。
今回のアルバムで、彼女の歌にもはまってしまった。不思議なシンガーだ。まるでヴァイオリンやチェロのような器楽的な“こぶし”。いたるところに微妙な味わいのスパイスが散りばめられている。ときにはトリッキーにも感じる。けれども彼女の歌は癖があるのに嫌みがない。懐かしさを感じるが古臭くない。きっと、しなやかであたたかい人なのだろう。音楽“いのち(orマニア)”の人にも、そうでもない人にも彼女は受け入れられるだろう。これからも共感できる曲をつくり、そして歌い続けてほしい。
ギブソン・ジャパン (東京支社長) 山名 芳高
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大きな目、大きな口、色白でおかっぱ頭の黒髪、そこには日本人形のような長見順がいた。もの静かでシャイで時々まばたきの回数が多くなるのが順ちゃんの特徴と私の頭にインプットされたのは束の間、ギターを弾く順ちゃん、お酒の入った順ちゃんは、まるで順ちゃんの別の人格を持ったクローン人間のようだ。順ちゃんの呼吸、鼓動、イマジネーションが、そのまま素直にギターに、歌に表現され、順ちゃんの胸の内にひめた熱いものを感じる。日本酒を飲むと、とても陽気になり、鋭いつっこみで、周りを爆笑の渦にひきこみ、順ちゃん自身もケラケラ笑いいつまでも飲み続けるのだ。いつもの日本人形のような順ちゃんとは全く違った一面が見え隠れする。そして順ちゃんの歌も不思議な魅力で周りの空気の流れを変えてしまう。せん細、かつけなげな少女の目を持つ人、そう私は感じた。アコースティックなサウンドと独特な詞の世界にいつの間にかひきこまれてしまう。遠い昔に聞いた、子守唄のように私の気持ちを穏やかにしてくれる。それは懐かしさと、自分自身忘れてはいけない大切なことを呼び戻してくれるそんなひと時を、かいま見ることが、出来る。最近ではシンセサイザーやコンピューターによる打ち込みサウンドが流行している中、シンプルで生の演奏と順ちゃんの歌のメロディーが、とても新鮮で、私の耳から離れなくなってしまっている。順ちゃんの目から見た世界、聞いた世界、感じた世界を、音として集約した「大きな花」は私にとっても大切な一枚になってることは間違いない。そしてそんな順ちゃんの感性をいつまでも持ち続けてほしいし、今後も順ちゃんには興味しんしんの渡辺敦子です。どうかみなさんも長見マジックにはまってみては、いかがでしょうか?
渡辺 敦子